苺のつぶつぶ

ある地点から駅まで。
一度歩いたことがある道なのだけど、今日は逆方向、つまり駅からそのある地点へと行きたかった。向きが変わると、私には到底同じ道には思えない。行きと帰り、ふつうは同じ道だと認識できるものなのだろうか。私には違うふたつの道に思えるのだけど。

もうここ一年くらい、階段をうまく降りれない。もともとリズム感に欠けているのか、そして今はどんどん怖さが募って、必ずてすりのそばを、そろそろと降りることにしている。それでも3回に一回は踏み外してる。

話のついでに昔できなかったこと。
幼稚園に入園したとき、ただひとりスキップができなかった。ようするにやっぱりリズム感に欠けていたわけで。

ただひとりだけできないという事実にショックをうけた母に、家で猛特訓させられた。二間のアパートの、あっちの部屋からこっちの部屋をひたすらスキップで往復。「できたら苺を食べさせたげる」。それだけが希望の光だった。

苺は大好きだけど、時々そのときのつらさがよみがえる。

観覧車で交わしたはじめてのキスはいちごの味がした、なんていうけれど(誰のことばだろう?)。

よくよくみるとつぶつぶだらけで、たまに背中が粟立つ。そんな苺は甘酸っぱい。