向田邦子

向田邦子を読む。
菊池寛の話を聞いたことがあるという。「人の批評をするときは欠点を先に言いなさい。好い人だけどだらしがない、ではなく、だらしがないけど好い人だ、という具合に」。

たぶん世の中のビジネス書は逆のことが書いてある。「あなたにはこんないいところもあるけど、こうしたらもっと良くなるのでは」と相手を傷つけぬようアドバイスしろって書いてあるのではないかな(私はハウツーものを読まないので推論ではある)。現実に私が上の人から話をされるとき、そんな「努めた」雰囲気を感じることがある。

逆もいいものだなって思う。

もうひとつ。
「女の目には鈴を張れ。男の目には糸を引け」
女は目がぱっちりしているのがよい。が、男の目が大きいと気持ちが目にでてしまう、大物にはふさわしくない、と!

向田邦子を読んでいると、時々どきっとするくらい男女をきちんと区別している、書き分けている。
で、私はフェミニズム論的な論点がきっちり気になるのでドキドキするのだけど、でもしかしどうやらフェミニストであるわけではないらしく、「男と女は違うもんね」と腑に落ちる。

私たち(私は26才)は間違いなく新しい世代。近頃、(東京では)新聞をにぎわせた大手商社に勤める友人が、会社の組合の「婦人部部長」になったという。どうすれば結婚して出産しても働き続けられる環境になるか、会社に提案するのが仕事。
「それは会社の環境の問題じゃない。もちろんそれもあるけど、結局は私たち(働いている女性)の気持ちの問題だよね」

自分たちが道を切り開く、なんて気概ははっきり言ってない。結婚して出産しても仕事と生活のすべてを両立させている女性というのがすでに前例として世の中にいて、「ああ、すごい」とは思うのだけど、それは自分には無理だと感じたり、そもそもそんなキャリア女性になりたいわけじゃないと思ったり。
スーパーウーマンへの憧れは、ない。

でも純粋に夫の給料だけで生きていける時代じゃないのが現実。だから働く。こどもが産まれたら、きっともっと大変なことになる。だから働きたい。「働き続けたい」というよりは、「もう一回働きたい」。

だからある会社が、新卒で雇った総合職の女性がずっと働ける環境について考えるのはナンセンスな話だ。本気でもう一歩を踏み出す気があるならば、既婚女性も小さい子どもを抱えた女性も中途採用できる気概を持つこと。

「子持ちで働いてます」とかママさんなんとかです、なんて私たちもイチイチ宣言したりしません、きっと。そんくらいの覚悟はあるから。